いい年なのにテレビっ子!

テレビの感想や芸能ネタなどのつぶやきリポート

ド深夜に再放送していた観月ありさ主演の吉原炎上が面白かった

吉原炎上といえば、タイトルからして見なくても想像がつく内容。

みんながそう思うでしょう。

貧しい家の子が吉原に売られ、哀しいめにあったり、哀しい女たちを目にしたり、そんな女たちで争ったり・・・

そういった内容を想像するはずです。

そして、そういった想像をきっちりなぞったように展開していくのが本作、吉原炎上なのです。

でも、おもしろい。

想像通りに話が進むからって、面白くないってわけではない。

想像通りにトレースできてるかどうかってことは問題ですが。

吉原というキーワードから、みんなが求めている材料、見たい材料は自然といくつか出てきます。

それをテンポよく見せ続けてくれるドラマでした。

なので、退屈することなく、流れよく物語が進行していきます。間延びがいっさいない。

本作では、皆の想像する吉原が丁寧に描かれていきます。観月ありさが主演なので、艶っぽいシーンはありません。

映画の吉原炎上みたいな女子同士の激しさもない(控えめ)。

性的な事情も教科書程度にしかなぞってはいきませんが、そこで働く女性たちがいかに搾取され、紙くずのように扱われていたかは表現されていました。

哀しい。

とくに病気になって、ちょっと精神的に病んでしまった後でも男をとり続けようとする元花魁(有森也実)だったり、足抜けに失敗して首に傷をつくり、最低ランクの店で客をとり続ける女(のちに吉原に火つけをし吉原炎上を起こす)などは、そういった女性たちの悲しみを体現していた。

Hは肉体労働です。体を使うことはもちろん、一人の人と密に絡むので、気がぬけない。

そういったタイマンの状態が一晩中つづくのです。

いかに大変な仕事だったか。

それなのに、女たちに無料で与えられるのは、みそ汁・たくあん・白飯のみなのです。

あとは、買ってきたり、店に買ってもらったり(借金になる)しないと手に入らない。卵ひとつにしても。

衣装代や部屋代などはもちろん店にとられていただろうし、吉原に堕ちるともうもとの世界に戻れない(店への借金は一生返せない)しくみができてたんですね。

本人のやる気とか、真面目かどうかとか、そういった問題ではない。

本作の観月ありさですが、背の高さが時代に合わないとか、腰の高さがありすぎて着物が似合わないなど、いろんな問題はあるのですが、意外になかなかはまってました。

初恋の男に裏切られ河原で号泣するシーンも良かった。

今より演技うまいなって思った。監督とか演出の指導が良かったんだろうか。

太い声で恨みがましく叫び泣くシーンは見応えバツグンでした。

観月ありさの役ですが、強運といってよい女性でした。

吉原に売られたきたものの(ここは大不運)、大きな病気にもならず、売れっ子になり、ちゃんと借金を返して吉原を自分の足で出ていきます。

これも吉原が燃えた影響もあるでしょうね。

吉原が昔の形のまま続いていたら、借金も返せなかったかもしれない。

吉原が昔ほど儲けにならない状況だったために、いろんな人が手をひいた、それで解放されたとみることもできます。

観月ありさの強運ポイントとしては、生涯思い合える男(東幹久)と吉原で出会えたこと。

どの時代でも強く思い合える、思い続けられる相手と出会うのは至難の業です。

観月ありさは東幹久と出会い、吉原を出て、結婚します。こんな幸せな女性は、吉原で働いたことのある女性ではほぼいないでしょう。

もうひとつの強運ポイントは、自らの借金にならない形で花魁道中ができたこと。

観月ありさは一生吉原で働く覚悟をして(大借金を背負う覚悟をして)花魁道中を店の旦那(藤田まこと)に申し出ます。

そして、これをきっかけに花魁道中ができることになるのですが、この費用は吉原の組合がもってくれることに(吉原の客引きの一大イベントとするために)。

これで大借金を背負わなくても吉原で花魁道中ができるわけです。

また、東幹久は金持ちで観月ありさを水揚げしようとしますが、観月ありさはこれを拒否。

ラブラブなのになぜと思いますが、観月ありさはお金で自分が他人にやりとりされる流れを断ち切りたかったから、自らの借金は自らで返済し、東幹久の元へと向かいます。

強いひとですね。こんなに筋の通った人がいるんですね。

ちょっとびっくりするほどですが、このまっすぐさ、不器用さが裏目にでなくて良かったです。

これで、東幹久がひどい男だったり、普通の男(ほかに女を見つけるような)だったら目も当てられん。

観月ありさの親友として、不運な吉原の女、星野真里が出てきますが、彼女のほうが典型的な吉原の女だったんでしょう。

天涯孤独で、子供をもつことも許されず、本気で愛してくれる男も出現しない。

周囲への嫉妬と憎しみをたぎらせ、病をもらい、金を稼げなくなったら薄暗い部屋に閉じ込められ亡くなっていく。

文章にするとめいりますね。

でも、そういった女性が山ほどいたんです、この時代は。

どの時代がいいとかってことはいえませんが(どの時代も時代なりの大変さや苦痛があって)、やっぱりきつい時代だと思います。

ラストシーンで吉原が大炎上する部分があるんですが、あのシーンの迫力がすごかった。

あれだけのもの(セット)を一気に燃やすって、ものすごいお金がかかってる。

エキストラの数もすごかったし。今だったら事故とかエキストラたちの怪我を考慮して実現できないのでは? と思ってしまいます。

スペシャルドラマにしてはすごいなと感心してみてましたが・・・・エンディングに映像協力として、映画「吉原炎上」とありました。

映画版の映像を借りたみたいです。

そうですよね、あんなシーン、そうそう実演できないです。

予算がすごくなる。

バブルがはじける前(ですよね? たぶん)の映画やドラマでないと絶対に実現できないものも見れて得した気分です。

あと、最後の最後で吉原で亡くなった無縁仏が眠る先として三ノ輪のお寺が紹介されてました。

その数、数万とか。

ブラックだなんだと騒ぐことのできない時代、それだけの人がお金のためにあれだけの苦しい、嫌な思いをしたんですね。

かわいそうとか、そんな軽い言葉では言い表せないものがあります。

でも、現代でも格差はひろがっているし、お金のためにひどいめにあっているひとはたくさんいるのでしょう。

このドラマのようにわかりやすい形で顕在してない分、問題は複雑化している。

あと、貧しい人のへの蔑みは今も昔も変わらないので、世間の理解もないというか、その点も問題ですよね。

真面目に働いていても、別に頭が悪くなくても、一攫千金を狙ったとかじゃなくても、貧しい側に落ちることなんて全然あるのにね。

自分も稼ぎが少なく、安全か危険か(豊かが貧乏か)でいうとわりとまずいほうの部類なので、そういった側面につい目がいってしまいました。

 


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