弟の夫 把瑠都が、佐藤隆太の義理の弟に。ゲイゲイしさはなく、さわやかなファミリードラマ
NHKがゲイの問題(?)を扱ったドラマです。
民放の場合は俳優同士をキスさせたり、いちゃいちゃさせたり、数字狙いの演出が目立ちますが、本作は全くそれがありません。
真面目にというか、リアルにゲイの問題に取り組もうという姿勢を感じさせます。
NHKってやっぱり真面目。というか、NHKドラマって優秀。
このドラマ、山場らしい山場がないんです。ほんとに平坦なドラマ。事件も起こらないし。ある家族の日常を淡々と描いていきます。
でも、ちゃんと間が持つし、ドラマとして成立している。
脚本とか演出とか、いろんなものがちゃんと絡み合って、静かだけど統一した世界観みたいなものができていました。
昭和っぽいっちゃー昭和っぽいドラマなんだけど、ちゃんとしたドラマってやっぱりそうなりますよね。
ということで、内容ですが、佐藤隆太が双子なんですが、弟は海外で亡くなります。
その弟はゲイで、夫、把瑠都がいます。その把瑠都が佐藤隆太を訪ねて日本に来ます。
佐藤隆太の小学生の娘が把瑠都を気に入り、把瑠都は佐藤隆太の家に滞在することに。三人での共同生活がはじまります。
佐藤隆太は過去に弟にカミングアウトされますが、うまく対応できず、弟とは疎遠になっていました。
疎遠になったままの弟が亡くなり、把瑠都が現れることで、「大好きだった弟」のことを思い出し、なぜ弟のことを受け入れてやれなかったのかについて思いをめぐらすようになります。
把瑠都との関係を構築しながら、ゲイへの偏見もなくなりますが、同時に弟のことを受け入れられなかった過去への後悔も大きくなっていきます。
また、佐藤隆太は今は資産運用(親から受け継いだ土地の運用)で暮らしていますが(つまり無職で娘を一人で育ててるってこと)、過去には仕事人間で、中村ゆりとの結婚に失敗しています。
概要はさっとこんな感じ。
ゲイを扱うと、男同士の絡みが・・・みたいな期待をもって見る方もいるかもしれませんが、それは一切なし。
把瑠都が酔っぱらって佐藤隆太に抱きつくシーンがありますが(佐藤隆太は拒否)、それのみです。
当たり前っちゃー当たり前。
ちょっとしたきっかけで、いきなり男同士で絡んでいたら、そっちのほうが断然不自然です。
ってゆーか、男女だとしても不自然だろ。
そんなベースはきっちり守られています。
ドラマですが、ちょっと堅苦しい佐藤隆太に対し、把瑠都はなんでも飲み込む優しさというか、包容力のある外人として出てきます。
こういったキャラって日本人だと「変わり者」みたいになってしまいますが、外国人ってポジションだときちんと成立しますね。
そういった把瑠都に佐藤隆太も自分の狭量さみたいなものを気づかされ、考えを変えていきます。
また、ゲイであることに悩む娘の友人の兄(中学生)が把瑠都に相談にやってきたりするのですが、そういった姿を見ることで、過去の弟を思い出したりします。
他にも佐藤隆太の弟の同級生で隠れゲイとして野間口徹が出てきます。
野間口徹は高校時代には佐藤隆太の弟の親友で、彼のことを好きだったのですが、脈がないことがわかっていたので告白はしていません。
そして、把瑠都の存在を知り、会いにきます。
野間口徹はゲイであることを隠して生きつつも、ゲイであることに特別苦悩したりはしていません。
普通のサラリーマンとしてさらっと生きてます。おネエっぽくもなく、上手く世間と折り合いをつけてる感じがリアルでした。
おもしろかったのは、娘の学校の先生として出てくる大倉孝二。
佐藤隆太の娘が把瑠都のことを大好きで学校で話題にすることを心配して、佐藤隆太を呼び出します。
娘が「男同士でも結婚できる」などと発言することを軽く問題視するわけです。
また、そういった変わった発言をすることで娘がいじめの対象にならないかを心配する(そんなにすぐいじめって起こるの?)。
最近の学校ってほんとに大変ですね。たったこれだけのことで、ここまでいろいろ分析して、先回りして対処していくんですね。
そんなふうに育てられた子たちが、まともに育つとは思えないんですが(他人が先回りして対処することで、思考能力と問題解決能力がゼロになる)。。。
会社でも年が下になればなるほど「難しいな」って思うんですが、こういった学生生活を送ってきてるからでしょうか。
そういえば、やたらと誰かを攻撃したり、攻撃されたと騒ぐ傾向が強い奴が多いと思うんですが(すぐいじめる、いじめられるって関係を構築したがる?)、こういった育てられ方をした結果なんでしょうか。
「もう働くな」
そんなふうに対応したら大問題になるんでしょうね。でも、それが周囲の本音ですよ。
ちょっと話がそれましたが、ドラマでは佐藤隆太と娘と良好な関係を結んだ把瑠都が帰国し、数年後家族を伴って訪れてくるところで終了です。
佐藤隆太と把瑠都は家族になったというテイで終了。
ほんわかしたファミリードラマです。
最初はピリピリした様子で把瑠都と接する佐藤隆太ですが、娘が把瑠都に打ち解け、また、把瑠都のこころの優しさに触れ、佐藤隆太の弟に対して強い愛情をもっていたことを知ることで把瑠都を受け入れていき、最後はかなり円満な形で終了します。
実際にゲイの弟の夫が現れたら、こんなふうに円満な感じで終わらないと思いますが、ファンタジーとして楽しめます。
ファンタジーといいながら、把瑠都が財産目当てじゃないかと訝るリアルさもありましたが。
また、把瑠都が現れることで、佐藤隆太と別れた妻、中村ゆりとの関係も改善していきます。
新しい人間の出現とか、人間関係ってちょっとしたことがきっかけで修復したりするんですよね。自然に。それが上手く表現できてました。