「恋愛中毒」山本文緒 過去には薬師丸ひろ子で映像化も
読書量の多い人は、はまった方も多いのではないでしょうか。
それが山本大先生。
山本先生の書くお話は、今はやってる小説などとは真逆で明るくないです。
リアルでファンタジー要素がない。
ちょっとダークというか、人間の鬱々としたところをうまく表現したものです。
かといって、単に暗いとか、陰険とか、そーゆーわけでもない。
どろっとしたところもあるんだけど、さらっと明るかったり、あっけらかんとしていたりもします。
それこそがリアルだと思いません?
だからみんなはまったんだと思います。
一時期はものすごく売れた方だし、今でも過去作品はコンスタントに売れていると思います。
新しい作品はあまり書かない先生ですが、過去のものを漁るだけでも、十分に読み応えのある作品がいっぱいあります。
人間を描いた作品ばかりなので、時代を問わない内容です。
仕事で鬱々とする、いいことばかりじゃない仕事に向き合うみたいな内容のものもたくさんあるので、今の時代にむしろマッチしているかもしれません。
ということで、恋愛中毒ですが、ものすごくおもしろいです。
三回ぐらい読んだかな。
何年かに一度、また読もうかなと思う内容。
私の中では結構古典(名作)です。
恋愛小説ですが、どんでん返しも結構あります。
心理描写が秀逸なのですが、それに負けず劣らず展開のおもしろさがあるんですよね。
主人公の女性は地味でどちらかというとグチグチしたところのある女性。
いや~な感じのところもある主人公なのですが、だからリアルなんです。
サバサバなんて絶対嘘じゃんね。
そんな人間いやしない。
とゆーことで、世の大半の男女はこの地味でぱっとしない主人公に自分を重ねることができます(私もそう)。
だから、読んでてずっぽりはまるんです。
主人公は過去に結婚で失敗しており(その内容も結構すごいです。読んでからのお楽しみ)、離婚歴あり。
人を好きになると、ブレーキがかからないところあり、その行動が周囲をあっと言わせます(称賛ではない)。
そこがこの物語の肝というか、展開のすごさです。
展開だけではなく、見どころ(読みどころ?)は主人公の心理描写。
これが泣けます。
赤裸々とかじゃなくて、ほんとに人の心の機微というか、微妙なところがすくえてるんです。
それが涙を誘います。
みじめだったり、ちょっと汚かったり、でもひたむきだったり。
主人公は欲しいものをみんなの前で「欲しい!」とは言えないタイプです。
でも内に秘めるものは強く、あきらめないタイプ。
そういったタイプの人間が巻き起こす騒動がうまく表現できています。
なんか抽象的な表現で、実際のちゃんとした内容にふれてませんが、ぜひ読んでいただきたいので、ぼかした感じで書いていきます。
主人公は「新しい男」を好きになりますが、別れた夫のことを忘れておらず、結婚時の自分の行動がまずかったのか、なぜ結婚がうまくいかなかったのかという思いをものすごく強くもっています。
そんな主人公の姿が哀しくて、涙をさそいます。
もう忘れたら、思い出しても思い返しても苦しいだけじゃん。
そう言えるのは他人だから。
本人は絶対に抜けられない思いというのが確かに存在します。
とくに恋愛に関しては。
そのあたりがほんとにうまく本作に表現されてます。
そういった点ではこれ以上の作品はないと思います。
ラストのほうに、元旦那との共通の友人(おぎちん)の携帯を盗み、元夫に電話をかけるシーンがあります。
その意外な展開(携帯を突然盗む)、そして、主人公の哀しい姿は衝撃的です。
他にもいろいろやらかすんですが、私はこのシーンが一番びっくりしたし(意外な急展開)、印象に残ってます。
でも、他のところのほうが衝撃的だったという人のほうが多いようです。
読んでみて、ジャッジしてみてください。
ほんとにぜひ読んでほしい作品。
ちなみに過去にはたしか薬師丸ひろ子でドラマ化もされているはず。
相手の男役は鹿賀丈史じゃなかったかな。
まさにはまりそうな二人です。
おぎちんが元男闘呼組で、息子が今ヘイセイジャンプ(だっけ?)にいる人で・・・ダメだ、思い出せない・・・の人がやってたと思います。
こちらもはまってたような。
人選が良い。
ちゃんと全部は見てなかったんですが(忙しかったのかな? それとも絶対に原作を超えられないでしょ? と思って見なかったか)、機会があれば見てみたい。
山本文緒の本って、過去に結構映像化されてます。
内容が玄人(作る側の人間)好きするものですからね。
納得です。
パイナップルの彼方・・・富田靖子
群青の夜の羽毛布・・・本上まなみ、玉木宏
こんな感じ(違ってるかも)。
たぶん、もっともっとあるんだけど、思い出せない(年を感じるわ~)。
山本文緒先生の小説は、短編集もものすごくおもしろいので、読んだことない人にはおすすめです。