カルテット 松たか子と宮藤官九郎、繊細な夫婦のすれ違いを丁寧に描く一時間
松たか子と宮藤官九郎の出会いから結婚、夫婦になってからの微妙なすれ違いを丁寧に描いていった一時間。
たいした出来事もないのに、一時間が退屈には感じませんでした。おもしろかった。このあたりは脚本の力です。
さすが坂元裕二大先生。書くものが文学的ですよね。
ドラマというより映画のような雰囲気で物語が進みます。
夢見がちで繊細な旦那と平凡だけど地に足のついた嫁がぶつかり合うこともできずに、どんどんすれ違っていきます。
すれ違っていくというか、旦那の違和感がものすごく積みあがっていくんですよね。
嫁は逆に満足感をあげていったりしてるのに。
旦那は恋人が日常化していくことに耐えられず、嫁は彼氏を日常化したことに満足している。
このすれ違いは、程度の差こそあれどんなカップル(夫婦でなくても)にでもあることだと思います。
しかし、夫のクドカンは繊細だけど、鈍感ですね。
結婚しなくても彼女にした時点で、普通は「ああ、こいつも平凡な女なんだな」と気付くもんです。
それで別れたりする。
そこで、気付かずに結婚して、大騒ぎになったのは、実はやりがいある仕事を会社からとりあげられたことのほうが大きく関わっている気がします。
仕事してたら、嫁との違和感もごまかしてやりすごすことができたかもしれない。
そして、「ああ、こんなもんなんだ」とゆっくりと素直に受け入れられたかも。
異動させられ、やがて退職し、そこまで凝視しなくてもいい嫁との違和感に取り組みすぎたから、苦しくなったんだと思います。
しかし、タラレバ娘といい、映画の趣味や感想が合わないことがここまで二人の関係に響く?
謎なんですけど。
好きな人だから、価値観が一緒でいてほしいってやつなのかもしれないけど、映画の趣味とか食べ物の嗜好(レモンかける、かけない、ここでも出てきましたね。どっちでも良くない? 気になったことないんですけど。かけてもかけなくても、唐揚げは美味しい。かけてもかけなくても、それぞれの美味しさがあるので気にならない)とか、違って当たり前じゃんってむしろって思ってしまう。
笑いのツボが違うとかもあまり気になりません。
同じテレビを見て、共感したり笑ったりできなくても、ぜんぜん平気。お互い別々のことしてたらいいし。
この別々のことをしてても平気って思えるか思えないかはでかいかもしれませんね。とくに一緒に暮らすには。
ああ、でも、あれだな、笑いのツボより、悪口のツボが合わないほうがつらいかも。
あと、社内恋愛とかしてて、ものすごい裏表があったり、押さえるべき人間にすごい上手に媚を売ってたりするのを見たら、やるじゃんと思うより、信用できないな、こいつって思ってしまう。
価値観って、映画の感想とかより、そういった人生での立ち振る舞いのほうに出るような気がするんですが。そっちのが全然気になる。
お店の店員さんに対して微妙に横柄な態度をさらっととっていたりとか、いじめられたり苦しんでる人を見て若干おもしろそうな目になったりするような人にこそ、価値観の違いを感じてしまうのです。
そうやって考えると、苦手ポイントが違うってだけで、相手に違和感を感じるポイントって結構あるんですよね。
大きなものでなくても。この旦那(宮藤官九郎)が特別繊細とは言い切れません。
ちょっとした違和感(それがちょっとしたことだから、言えなかったり、我慢したりする)の積み上げでやがてコップが溢れて終わりを迎えるというのは誰にでも起こり得ることなのでしょう。
こーゆー夫婦って多いんでしょうね。離婚も多いし。子供がいたら・・・ってことでしょうが、できない夫婦もいるわけですし。
難しい問題です。
さて、松たか子のドラマといえば、どうしてもキムタクとやっていたラブジェネレーションを思い出すのですが、松さんの相手役も変わってきましたね。
数年前は映画で阿部サダヲを夫婦をしてたし、今回は宮藤官九郎。実力派になるにつれ、松さんの相手もどんどん渋くなっていきます。
今回はオープニングから、もたいまさこががっつり出てきましたね。松さんをびんたしてたし。このドラマのもたいさんの黒い感じがとても好きです。
あと、ビンタされた松さんの顔がおもしろかったです(おもしろくしてたからだけど)。
宮藤官九郎に対する満島ひかりの演技が子犬がキャンキャンしてるようで、ちょっとうるさい感じがしました。満島さんって声が高いんですよね。
それがときどき妙に気になります。とくにこのドラマはほかの人がみんな落ち着いているので、悪目立ちしてる。
吉岡里帆のほうがドスがきいてるんですよね、意外に。
今週一番笑ったのは松田龍平のスマホのバッテリーが切れるシーン。
松田のお兄ちゃん、あーゆーどんくさい感じが妙にはまります。
私生活も不器用なんですかね。そうであってほしいと勝手なことを思ってしまう。
とゆーことで、今週のあらすじはこんな感じ。
松たか子の旦那、宮藤官九郎を家に連れて帰ってくる満島ひかり。しかし、家には松さんは居ません。
松さんは宮藤官九郎の母、もたいまさこに自分たち夫婦がどのようにして出会い、夫婦として破たんしていったかを話して聞かせます。
そして、松さんは姑のもたいさんに離婚の意志を告げます。
また、宮藤官九郎も満島ひかりに妻、松たか子といかにすれ違い、自分が失踪するまでに至ったかを語ります。
一方、松田龍平は会社の資料室に閉じ込められ、スマホも充電切れで途方に暮れます。
そんななか、吉岡里帆がみんなが暮らす家を訪問。
満島ひかりをしばりあげ、松さんのバイオリンを盗もうとします。
その場に出くわした宮藤官九郎が妻、松さんのバイオリンを取り返そうともみあいになり、吉岡里帆をベランダから突き落としてしまいます。
ラストは急展開でしたね。
吉岡里帆が登場してからベランダから投げ落とされるまで、数分しかかかってません。
いきなり雑。
でも、さらっといったほうがいいシーンでした。丁寧にやったら「不自然な感じ」が見えすぎて、大失敗な感じになったと思います。
内容自体がいきなりすぎて不自然でしたしね。
来週以降、この不自然さを解明していくんでしょうが、うまく着地できるでしょうか。
じっくり描く部分と展開を早くしてテンポを重視するシーンと、うまく使い分けられてて、見るほうを退屈させません。
制作側の力を感じさせるドラマです。
次週以降の物語の展開にも期待できそうです。